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ベートーヴェン後期弦楽四重奏曲のススメ

ベートーヴェンといえば、いわずと知れた“楽聖”。音楽の神。
そして、何と言っても、キング・オブ・ザ・シンフォニー。
彼の9つの交響曲の前に多くの芸術家がひれ伏してきた。
そう、その9つどれもが音楽史上最も優れた作品とされている。
第3番『英雄』、第5番『運命』、6番『田園』、ベト7、第九!
名前を聞けば誰もが震え上がって死ぬ。うそ、死なない。

それからやはりピアノソナタも名曲揃い。
月光、熱情、悲壮など、聴けば誰もが「ああ、この曲知ってる、ああ美しい」となるような名曲。

しかし、弦楽四重奏と聞いて、何か曲が思い当たる人がいるだろうか。
ベートーヴェンに限らず、この分野はもっとも敬遠されているように思う。
何せ音色が弦楽器だけである上、ピアノみたいに気軽に1人で演奏できないし、
何よりも、この分野は作曲家が最も内なる世界に閉じこもりやすいものである。
サービス精神が少ないというか、地味というか・・・。


この分野で、神といわれる2人の作曲家がいる。
ベートーヴェンとバルトークだ。
僕はそのどちらの作曲家も非常に好きだが、ここでは前者の後期作品にスポットを当てて紹介したい。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の後期作品は、その12番~16番の5曲だが、これらは少々難解でとっつきにくいものであるため、19世紀ロマン派、長い間評価されずにいた。
例えば、作曲家シュポーアは
「わけのわからない、取り返しのつかない恐怖」と言った。
ベートーヴェンの作品に恐怖を感じたのは、同時代のゲーテもそうであったが、そう考えると多くの人間がそれらの作品を理解できなかったのだろう。この時代の人々には早すぎる作品だったのかもしれない。
他にもいろいろそれらの批評の声は多く残されているが、少なくとも20世紀までは「人を寄せ付けない」とか「不可解」などと言ったものが多かった。

しかし、20世紀に入り、現代音楽界で最も神格化されたあのストラヴィンスキーは
「絶対的に現代的な楽曲。永久に現代的な楽曲。」と述べた。
ストラヴィンスキー自体、傑作『春の祭典』で、大きな賛否の反響を呼び人々を狂乱させたが、
まさにベートーヴェンの弦楽四重奏曲13番の終楽章、『大フーガ』はそれこそ、春の祭典のそれに匹敵するもしくはそれを超える混乱を生んだだろう。
2曲とも、大変野性味溢れた“フォービズム”という言葉にふさわしい音楽だ。

他にも、宮沢賢治は、後期弦楽四重奏曲の後期作品を、第九以上の傑作とみなしていたようだ。
とにかくそれだけ、死を悟ったベートーヴェンの、人生への諦念というか、その深い、しかし内向的な精神をそのまま音にしたような神々しい作品郡であることは間違いない。


『弦楽四重奏曲第12番』は変ホ長調の、とても親しみやすい楽曲だ。
上の文と矛盾するようだが、やはり音楽的な革新性は高く、一筋縄で説明できないところが多々ある。
1楽章は鋭利で鮮烈な主和音で始まる。その後威勢のいい曲調で展開される。
で、最後の4楽章、これがまたものすごく僕が好きな曲。
チャイコフスキー風の軽やかな行進曲のような、ウキウキしながらお散歩するような、そんなかわいい音楽。
でも、やっぱりベートーヴェン。その中でもやっぱりどこか重厚な感じがする。その対比がたまらないね。うん。


『弦楽四重奏曲第13番』は、後期の作品の中では最も目立つ作品。しかも一番長大で難解だと思われる。でも、名曲揃い。
1楽章 Adagio, ma non troppo - Allegro :ソナタ形式の、堂々たる楽章。僕にはやっぱりとっつきにくい音楽に思えてしまう。
2楽章 Presto :流れるように早い楽章。おそらく最初は誰もがこの曲に心奪われるんじゃないかと思う。かっこいい。
3楽章 Andante con moto, ma non troppo. Poco scherzoso:田舎風の、なんか民俗舞踊風の音楽。 題のPoco scherzosoのとおり、緩徐楽章とスケルツォの中間のような印象を持つ。人気の高い楽章。
4楽章 Alla danza tedesca. Allegro assai :ドイツ舞曲風に。メヌエットというかレントラーというか、軽い感じの舞踏楽章。きれい。
5楽章 Cavatina:有名な「カヴァティーナ」。大変美しい、正真正銘の緩徐楽章。

この13番には2通りの6楽章がある。「大フーガ」と「新6楽章」の2つ。
新6楽章は、旧6楽章の「大フーガ」があまりに難解で、当時の聴衆からの評価が良くなかったため書き直したもの。現代になり、大フーガが再評価され、今日ではどちらのヴァージョンも見られる。
旧6楽章 大フーガ:非常におどろおどろしく、重厚で、前の楽章たちとは不釣合いに長い曲。でも、聞けば聞くほどすごい曲。まさに「永久に現代的な楽曲」。
新6楽章 Allegro:旧作とはまったく正反対の軽やかな曲。でも素敵な曲。こんな素敵な曲をベートーヴェンが書いてしまって残念。ダメな曲を書いていれば、心置きなく大フーガに戻せたのに。


『弦楽四重奏曲第14番』こそ、やはり一番人を寄せ付けない曲で、全体に何か狂気のような陰鬱さをはらんだ曲。全楽章切れ目無く演奏されることも、人を寄せ付けず緊張感を与える理由の1つだろう。アマチュア禁止の曲とも言われている。僕はものすごく好き。
まず、この時代では非常に珍しく、1楽章がAdagio(すごくゆっくり)で、その上長い、しかも全体に陰鬱な雰囲気を漂わせている。
5楽章は一見明るいが、なにか狂気じみたものを感じる“変な曲”として知られている。
7楽章は、なんかものすごく機械的で、非常に厳しい、しかも勢いのある曲。規律の取れた貴族の軍隊のよう。


『弦楽四重奏曲第15番』は、中間の第3楽章「リディア旋法による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」をクライマックスとした曲。
その第3楽章は「人類最高傑作」とも呼ばれるほど美しく、非常に澄んだ瞑想の世界。機能和声を捨てて旋法で美を表現することを思いついたベートーヴェンはすばらしすぎる。


『弦楽四重奏曲第16番』は、ベートーヴェン最後の作品。小規模だが、これまた不可解な曲。
「ベートーヴェンのすべての技法がここに集約されている」というわけではなく、それとは別の、僕らが生きている世界とは別世界に半分旅立ったような曲。
終楽章の緩やかな導入部の和音の下に、“Muss es sein?(かくあらねばならぬか?)”と記入しており、より速い第1主題には、“Es muss sein!(かくあるべし)”と書き添えている。その言葉もだが、旋律も不可解なものだ。

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comment

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同感ですよ。
まさに凄すぎる音楽です。
後期、そしてラズモフスキー、他になんか要りますか?。
なんにもいりませんよね。

>MKさん

おっしゃるとおりですね、共感していただけて嬉しく思います!
人類の宝ですよ。
交響曲ばかり注目されがちですが、
この頃の作品群はぜひみんなに聴いてほしいものばかりですね!
  • 2012/01/22(日) 18:14 |
  • はじめ様 |
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  • 2013/02/28(木) 13:52 |
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趣味:音楽鑑賞、読書、ツーリング、心霊スポットめぐり
好きな作曲家:ベートーヴェン、マーラーなど


一応作曲家です。
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ようこそ、僕の森へ。

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